黒クロRPまとめ T2~T8

カトプトーの観察日誌。
いつ書くか、どう書くか、何を書くかはまったく決まっていないし、日誌とも言えないかもしれぬが、今後のために角だけ書く。どこまで続くか、なるべく続けよう。

T2
カトプトーを拾った……いや、見つけてから年月が経った。
ふわふわした影に見えたその姿は今や人間の子供と変わらなくなっていた。そうだな、男児のようである。
こちらの話は初めからある程度分かっていたようだったが、近頃は自分でも言葉を発するようになってきている。
まだまだ子供であるが故に拙いもので、私の名前も呼べずにサー、サーと短くなっている。
だが、悪い気分ではないな、うん。
職業柄勉学についてしか教えられなかったのは少し悪手だったかもしれない。
生半可な知識のせいで色んなものに興味を持つようになってしまったようであちこち見ようとしてしまうのだ。
まあ、水鏡から出られぬ身であるから問題なかろうと思っていたのたが、これが一番悪かった。
水鏡ごと動き出してひっくり返ること数えきれず。その度に走って水を取りに行かねばならなくなってしまった。
急いで水を注げば、昔見つけた時のようにぴーぴーと泣くので、水面に手を置いてゆっくりと大丈夫だと言い聞かす。
それでようやく落ち着くのだが、また手のかかる子供になってしまった。
これはもう少し成長したら良く言い聞かせるとしよう。

ここからは私自身の話だが、結局コフに居つく事になった。
カトプトーを抱えたまま旅はできぬし、私の知識を使って酒造りにも貢献できた。
報酬として金ははいらぬので泊まる場所をくれと頼んで今はそこに住んでいる。
いや、金には困っているのだ。一時カトプトーを手放そうかと思うくらいには困っているのだ。旅もできないし。
だがさすがにそれは思い直したし報酬も今の通りにした。
戦争で人が死んだ分新たな市民が増えて水鏡を見る人間が増えたこともあり少しは落ち着いて生活できるようになったのも大きい。
戦うのは嫌だが、立て直すのを厭う程人でなしでもない。それで、もうしばらく滞在する事にした。
怪しい噂もあるが、どうにかカトプトーが落ち着くまでうまく育てられれば良いのだが。
だが、まだ一つ気がかりというか、あえて無視してきた問題がある。

「カトプトー、お前は何を食べるんだい?」

T3
落ち着くまでゆっくりとコフで過ごす予定だったのだが、気付いたら船の上にいた。
もちろんカトプトーも一緒にだ。
そうそう、カトプトー。最近はなかなか育ってきたのだ。
目に映るもの、というより水鏡に映るものを珍しく思うのは変わらないまま大きくなったので、そこらで弱っている生き物を連れ込んでは世話をしている。
そう、水鏡の中に空間があるらしい。他では見た事ないのでカトプトーのいるこれだけの現象のようだ。
それに気づいてすぐに自分の腕も入れてみた。意外と広く快適そうではあるが、こちらから大人が入るのは無理そうだった。
作り直せばあるいはと思うが、それでカトプトーがどうなるか分からない以上は現状維持が最も良い選択に思えた。
それで初めてカトプトーに触ることができたが、うむ、肌もすべすべで気持ちよかった。人間そのものだった。うむ、健康そうで何よりだ。
そして食事だが、連れ込んだ生き物を食べてるかと思えばそうではないらしく、水さえ毎日新しくすれば良いらしい。
そこから精気をもらって生きているのだとカトプトーは語っていた。
そうそう、ものの読み書きもできるようになってきたのだ。なかなか賢い。
これを書いている船の上でも大人しくしてくれている。
そう、船の上なのだ。
事の次第は仕事をもらいに神殿の近くまで行った時に遡る。
知り合いのツテを辿って教師の仕事でもないかと聞きに行ったら、そこに彼がいた。
黒髪の堂々とした少年。自分より若いだろうに既に幾つも戦場を経ているであろうその姿は、遠くからも何度か見ていて知っていた。黒剣の若君だ。
彼はこちらに気付くとにこやかに笑いながら話しかけてきた。
この時に逃げていればと今になって思う。

「やあ、その格好から察するに、君は学者かな?」
「ええ、まあ」
「うむ。海には出た事あるかな?潮の満ち引きや風、星の運行には詳しいかな?」
「え、ええと、それなりに」
「うむ。今何か仕事を抱えてたり作物の研究をしたりは?」
「していないですが……」
「よし、では俺の船に乗れ」
「はあ……え?」
「ちと海に出ようと思うのだが、武門の家故に知に乏しくてな。君のような人材を待っていたのだ。ああ、もちろん身分は保証する、奴隷としてではない」
「いや、その」
「このアトランの車の中に宝石の島があるらしくてな、そこに行きたい。なあに、行き着かなくても報酬は払う。見つからねば家を潰して働いた者に報いて野に出るだけよ」
「それはお止めになった方が良いのでは……」
「そうさせたくなくば乗ってくれ。食事は出るぞ」
「……では一つ条件が」
「何だ?言ってみよ」
「今研究している水鏡、いえ、小さな物です。。それも載せていただきたい」
「構わぬ。早く持ってこい、今日船出だ」

これだから黒剣は嫌いなんだ。

T4
ひどい目にあった……1回だけの船出かと思ったのに何回も島を探すために船を出して、その全てに付き合わされた。
青銅の巨人が鎮座する島を見つけた時はこれで良いじゃないですかと皆が言ったものだが、若様は納得しなかった。
その上で目的の宝石の島を見つけたら、そこには見たこともない巨大な鳥が居た。
一面が夜になったかと思うほどの大きさの、もはや化け物と呼ぶのが相応しい大怪鳥だった。
実際に戦ったのは若様達で、私は鳥の動きはこうだとか、習性はこうだからきっとこうに違いないとか口を出しただけだが、本当に死ぬかと思った。
その甲斐あって大量の宝石を手に入れて、無事コフに戻れることになった。良かった。
海の上ではカトプトーの教育もままならぬ。だいぶ口も達者になったし、そろそろ私よりも知恵のある者に任せなければいけないかもしれない。
だが、それもこれも、若様の次の行動がうまくいけば、の話になる。
どうやらひどい風邪が流行り人がバタバタと死んでいるらしい。それを好機と異民族が攻めてきているらしい。
で、それを撃退するぞと速度と重さの釣り合いが取れるギリギリまで宝石を積んで慌ててコフに戻っているところなのだ。
後数日の内にはまた戦闘になるらしい、ああ、嫌だ嫌だ。これだから黒剣は嫌いなんだ。

「母さん、溜め息ついてると老けて見えるよ」
「……カトプトー、そこから出るようになったのなら先に言ってから出なさい」

もう、出来事を許容しきれないない、寝よう。

T5
コフは、酷い有様だった。
最初に立ち寄った時も戦争で状態ではあったが、ここまで酷くはなかった。
話に聞くとまずヤニアが落ち、その勢いのまま異民族が攻めて来たという。
何人もが一塊になって押し寄せ、飲み込み、蹂躙する。今まで個人の武勇に頼っていた戦士達は一人では敵わずに死んで言ったという。
防衛する側も隊列を組んでどうにか抵抗しているというが、かなりの劣勢らしい。
いや、鳥のダリド持ちが伝令にいると色んなことが伝わって便利だ。
怒りまで完全に伝わるのだから。
若様は目に見えて怒っていた。
命令は、コフの海岸に接舷する前に呟いた、ただ二つのみ。

「戦えぬ者は俺の後ろに居れ。戦える者は俺と共に走れ。こちらが蹂躙し返してやる」

その言葉を残して、若様は走り出した。目の前に見える敵集団に向かって突撃したのだ。
護衛の者達もそれに倣った。
鋭い槍が獣の腑を食い破るように前へ前へ、敵へ敵へと突き進んで行く。
これが戦争で、これが戦場で、これが戦士なのだ。

「母さん……人は、恐ろしいね……でも、仕方ないのかな」
「そうだね……でも、そればかりではない。お前には、これ以外の道を作ってやる」

敵を求めて吼える若様を見ながら、私はその姿を心に焼き付けた。

T6
反省だ、猛省だ、もう、カトプトーになんと言って詫びれば良いか分からぬ。
戦の場にはカトプトーを連れて行かぬと決めておきながら、結局は時勢に流されてしまった。
具体的には、復讐のための戦に参加してしまった。
教育のためだからお前も来いと若様に引き摺られて行った、が正しい。
そのくせ若様は自分で盛り上がってまた突撃するものだから、こちらは本当に死ぬところだった。
実際、カトプトーは一度死んだ……はずだ。
その瞬間のことは今でも鮮明に覚えている。
戦場で若様と逸れてから後方に逃げようとさまよっている時に敵に見つかった。もちろん走って逃げたが、学者の体力だ、すぐに追いつかれた。
異民族が振り上げた斧がゆっくりと振り下ろされたのも見た。
そして、水鏡が自らその斧に向かって行ったのも。
両断されながらもその勢いは止まらず、敵の顔を強かに打ち付けた。
打ち所が良かったのか敵はそのまま気を失った。私も失うところだったが、現実を見なければという思いが意識をしかと握りしめていた。
両断された水鏡を集める。もうその役目を果たせぬその姿に言葉は出なかった。ただ涙だけが流れ落ちていた。
ああ、お前と初めて会った時も、こんな風に涙を流していたなと、昨日のことのように思い出していた。
ただただ嘆き、その場から動くことはできなかった。
若様が探しに来るまで、戦が終わったことにも気づかなかった。
何故か濃い霧が辺りを満たしていて全く見えなかったぞワハハと若様が後で言っていたから、きっと霧の神にでも守られたのであろう。
こうして、私の戦は終わった。

が、こうして悠長にこの日誌を書いていることからも分かるように、カトプトーは生きている。
より正確に言うと、壊れた水鏡を素材に使ってより大きな物を作ってみたら、何事もなかったかのようにそこに居た。
人が入れるくらいの大きさに拵えたから中に入って抱きつきたかったが、こちらから全身を入れることはできなかった。残念。
代わりに、カトプトーの側から上半身まで出て来ることはできた。なので無事に抱きつくことはできた。
見舞いに来た若様にも見せることができた。言葉に詰まった若様を見たのは後にも先にもこの1回だけだった。
曰く、うむ、そういう趣味も、あって良いと思うぞ、神話級だけど、とのことだった。
息子なんだと説明するのを忘れて居たと気づいたのは今である。恥ずかしい。

そして、当初の予定通り教師を雇うことにした。
自分より知識があるものと言えぱ、心当たりはあるが正直気乗りはしなかった。同門の兄弟子である。
いや、性格が悪いわけではないのだが、カトプトーに悪い影響がありそうで嫌だったのだ。
だが、このコフにはあまり人もいないし、知り合いも減って行っている。カトプトーもよくよく聞けば一回死にかけて世の無常に目覚めたとか言い始めるし、仕方なし。
そう思って話を持って行った。

結果的には良い方向に話は進んだ。心配していたような悪影響も今は鳴りを潜め、確かな知識を持ち合わせた兄弟子は、良くカトプトーを教えてくれた。
方向に、と付けたのはおまけがあるからだ。
それを加えてこの日の締めにしよう。

「で、話とは。仕事をちゃんとやってくれれば私はちゃんと報酬も払うと言ってるんだが」
「いや、思ったより面白くてなあの坊や。もっとちゃんと教えてやりたい」
「うん、その分の報酬もちゃんと払うと言っている」
「いや、報酬は要らんのでな、ちょっとこちらから願い出たいことがあってな」
「……碌でもない話の様な気がするけど、何だ」
「うむ、結婚するぞ」
「……うむ、金は払うので考え直せ」
「いや、十分に考え直した結果だからな。これは」
「もう10年くらい考え直して来い」
「……いや、鈍いな。ここまでとは思わなかった」
「何の話だ?」
「お前をそこそこ好いていると言っているんだ」
「……2年くらい考え直してから来い」

T7
何だかんだあって、兄弟子……キルメスというのだが、と結婚することになった。
それを聞いて何故かカトプトーが母さんのダリドと結婚すると言い出した。お前、本当に神話級の何かになるぞ……
そんなカトプトーも色んな学者を招いては議論し、知識を蓄えてきた。より人をいつくしむようになり、最近はちょっと大丈夫かなと心配になるくらいだ。
私も夫の家族と色々話をして見分を深め、新たなコネを作ることに成功した。コフを出たらそっちに行くことも考えよう。
いずれも3人して学術の旅としてコフを離れていた間の出来事故、コフに戻ってから若様にその報告をしようと思っていた。
そうして戻ったら、コフがまた荒れていた。またかい。
異民族の死体をしかと処理していなかったことから疫病が発生したらしく、かなりの数の人間がまた死んだという。
若様が生きていればそんなことは許さないだろうと思っていたら、若様は幽閉されていた。なにしてるんだあの人。
このまま夫の知り合いを頼ってコフを出ても良いが、それでは何度も助けられた恩義を裏切ることになる。

「ちょっと、無理をしようと思います」
「母さん、止めた方がいいと思うよ」
「お前、面白いからやっちゃえよ」

この息子と夫の反応の差よ。カトプトーにしても自分はちょっと変わってるからいいけど母さんはやめようという意味である。
ええい、うるさい。私は行くと決めたのだ。だから

「よし、ちょっと一緒に行こうか」

T8
若様はやっぱり若様だった。
助けに行ったらおう、遅かったなと言われた。いや、もう少し焦りましょうよと皆に言われていた。
そうそう、若様を慕う者は多かったようで、自分以外にもかなりの人数が来ていた。
その全員の名前を覚えていた若様はさすがとしか言いようがない。これだから黒剣は嫌いなのだが、若様には付いて行ってしまうのだ。
そのまま黒剣の家に戻るかと思ったが、どうも辺境に向かうという。

「俺はあっちでちょっと力蓄えておくから、お前たちも少し鍛えてからこっちに来い」

そう言い残して一人でさっさと街を出て行ってしまった。
残された支援者たちは顔を見合わせ、そして方々に散って行った。若様の言葉通りに行動しようと皆が思っていた。
その一環として、まずすべきことはと考えた結果、家に帰って家族にこう告げた。

「ということで、カトプトーに水鏡を見せます」
「え、僕?」
「うはははは、面白い、やろうやろう」

水鏡から出てきたモノに水鏡を見せる。何が起きるにしても何かは変わるだろう。
それによってここから先を生き残るための力になるとは思う。

「いやいやいや、嫌だよ嫌だよ怖い怖い」
「いや、お前が今まで見ていないことの方がおかしい。やろうやろう」

水鏡の中に戻ろうとする息子を押さえつける夫。うむとても面白い画ではある。
そして息子よ、母の職業を舐めるでないぞ。すでに用意済みなのである。

「ということで、はい、見ようねー」
「ヤダー!」

水鏡に映ったカトプトーの姿が揺らぎそして戻る。なんの変化もない。
壊れたり動かないということはない。私が作ったのだから。
ということはだ、

「うむ、カトプトー、お前のダリドは何者かはともかく、人間みたいだね」
「ああ……ああ、よかった……ミノタウロスだと母さんのダリドに嫌われるところだった」
「お前の気にするところはそこかい。まあ……あー……」

夫が言いよどむ。何があったのかと思ってカトプトーを見ると、ああ、分かった。
今まで水鏡の中でぼやけていたカトプトーの身体がくっくりと、そう、水の中に入っているだけのようになっている。つまりは

「カトプトー……お前、普通の人間になったかもよ」
「え”」
「うん、なったな、これは」

そう言いながら夫がカトプトーを引き摺り出す。
うん、立派な息子がそこに居た。うんうん。うん……うん……

「あ……しまった……まずいことに気付いた」
「どうした?」
「なに?かあさん……」

半べそのカトプトーを見ながら、その気付いたことを言う。

「カトプトー……お前、これからご飯食べるんじゃないかな?」

その後、家の中には沈黙が満ちることになった。


主に、食費について考えて。


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