指輪って重いんです

 ラッパのマークのなんとやらと言うものがありますが、うちの藩国ではラッパと言えば私の事を指す言葉と同意でして、まぁ、その理由と言えば薬指に指輪さんがいるからでありまして。
 その能力もさることながらその派生も笑えるようなものではありましたが(いろんな意味で)、何より笑えるのはその入手先なのでありました。
 いえ、厳密に言うと入手先はそれほどでもなくて、そこにたどり着くまで、と言ったところでしょうか。
 「指輪が欲しい」って言葉は重いものです。薬指が飛んでいかない重り、とはよく言ったものです。なんでそれが重いのか、私は貴重な体験によりそれを理解することができたのです。

 ありゃ、命の重みだと。


 あれは丁度1年前の事でした。
「はぁっはっ、はぁ……」
 私は茂みの中を走っていました。追跡者と呼ばれるだけの能力を持ってして、ある人物の後を付けていたのです。
 しかして、その息はあがっていました。尾行ならば息を殺さねばならぬところです。しかし、そんな余裕はありませんでした。
 なぜならば、その道には目に見えぬ障害物があり、一度でもそれに触れれば色々なものが『終わる』からでした。
 私の前を行く人物はそれが見えているかの如く、いや、実際に見えていたのかもしれません。無駄一つない動きですべてを避けて進んでいました。
 置いていかれる!それが何に直結するかも分かっていました。だから、持てる全ての力を使って、ただひたすらに追跡を続けたのです。
 息切れしながら、集中の連続に神経をすり減らしながら
、そのプレッシャーを紛らわすかのように、私の口からは呟きが漏れていました。
「なんで」
 それを漏らすことで何が変わるわけでもなく、足を止める理由にすらならないことを理解しつつも、
「なんで」
 ただ、言わずにはおれなかったのです。
「指輪を買うのにこんな道をっ」
 恋人である妹人が指輪を買うために選んだ道は、蛇なエスピオナージも真っ青な危険地帯だったのです。
 目に見えぬレーザーを妹人の指示に従って越え続ける間に5回は後悔したでしょうか。警報が鳴り止まないことを26回は呪ったでしょうか。自分が追跡者でよかったと50回は喜んだのは確かです。
 永劫とも思える人生初の死と隣り合わせの数分間。命があることの重みを噛みしめつつ一歩一歩進んで行き、ふと、警報が途絶えたのが分かりました。
「はい、ついたよ」
 妹人がそう言って手を差し伸べたその瞬間、生きてることをより実感しました。達成感とともにやってくる疲労に苦笑しつつも、さてと気持ちを入れ替えました。
 これほどの厳重な警戒を越えた先です。さぁ、どんな素晴らしいところかっ……
 そんな私の目に入ったのは、そして私の動きを止めたのは、たったの5文字でした。


『ハイマイル』



 たかが指輪、されど指輪。この小さなものに命もかかるのだということを、みなさんよく覚えていてください。
 そして、もし恋人が露天に行くのに茂みを越えようとしたら言ってあげてください。

「正面からも入れるよっ!」

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